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(3)もし、それでも投資資金が足りず、外部資金調達が必要な場合には、まず負債で調達し、次に必要があれば転換社債、ワラント債などを発行し、増資は最後の手段とする。

このように、アメリカの多くの企業は、大まかにいえば資金調達方法を内部資金、負債発行、増資の3つに分けて、この順序で資金調達をおこなう。 この背景として、(1)内部資金は調達の費用(取引費用)がゼロであるのに対し、外部資金は調達の際、取引費用がかかること、(2汐ト部資金調達では、負債発行のほうが株式よりも取引費用が低い上、より機動的に実施できること、(3)アメリカ企業は増資が1株当たり利益に与える影響(希薄化)を重視することーーなどがあげられる。
このように、実際の企業は、企業財務理論の想定とは違って、同じ株主資本の調達でも内部留保と増資を区別している。 また、企業が以上述べたように行動すれば、収益性の高い企業は投資資金需要を内部資金でまかなえるため、株主資本比率が高くなり、そうでない企業は外部調達、特に負債調達に頼らざるをえないために、株主資本比率が低くなる傾向が生まれる。
このように、アメリカの個々の企業の資本構成はその企業の収益性の影響を大きく受けるといわれている。 また、アメリカ企業全体でみると、これまで収益性が日本企業よりも高く、しかも内部資金で資金需要をまかない、負債調達はなるべく避けようとしたため、かつては日本企業よりも高い株主資本比率を保ってきた。
しかし、1980年代半ば以降、アメリカでは自社株取得を積極的におこなう企業が増えたため、近年は日米企業の簿価ベースの株主資本比率はほとんど同じ水準になったとみられる。 5、2日本企業の資本構成の動向。
次に日本企業の資本構成の動向についてみてみよう。 1970年代前半までの高度成長期には、日本の実質経済成長率は10%前後と高かったため、一般に設備投資や在庫投資などの資金需要が大きく、内部資金のみで資金需要を満たすことはできなかった。
このため、企業は成長を図るために外部資金調達に依存する必要があった。 また、当時の日本では株式市場や社債市場での資金調達は補完的な役割しか果たしていなかったため、企業は銀行借り入れに頼らざるをえなかった。
この結果、高度成長期を通じて企業の株主資本比率は低下した。 1973年末に始まった第1次オイルショックは、Nの体質をそれまでの高度成長から低成長へと大きく変化させるとともに事業リスクを増大させた。
この結果、1970年代後半から、多くの日本企業は株主資本比率を高め、財務レパレツジを低下させることを財務目標として掲げるようになった。 多くの企業は設備投資が低下するもとで、借入金返済を進め、また一方で時価発行増資や転換社債発行などのエクイテイファイナンス(株式発行をともなう資金調達)をおこなったため、図88に示すように、企業の株主資本比率は1970年代後半から高まることとなった。

1980年代に入ってからも、日本企業は設備投資のほぼ100%を内部資金でまかなえたにもかかわらず、エクイテイファイナンスを続け、特に1987年以降、株高を背景に急増させた。 エクイテイファイナンスによって得た資金の一部は借入金の返済にあてられたが、1986年以降、調達資金の多くは金融資産の運用に向けられた。
この結果、日本企業の株主資本比率は、内部留保の増加と上記エクイテイファイナンスの寄与(増資、転換社債の転換、ワラントの行使)の両者が相まって、1970年代半ばの20%以下の水準から90年代には30%台にまで上昇した。 1990年代には、バブル崩壊後の長期的な景気低迷の中で企業の設備投資を中心とする資金需要は減り、内部資金で設備投資をまかなえる状況が続いた。
株価の下落によってエクイテイファイナンスは大きく減ったため、90年代前半は社債と借入金の調達が増えたが、90年代後半には資金需要の減少から借入金の返済が進んだ。 資金需要の減少を反映して、1990年代には株主資本比率はさらに上昇し、2000年には36%にまで高まっている。
1980年代後半以降の日本企業の財務戦略は、財務理論からみてどのように評価されるであろうか。 株主資本比率の必要以上の上昇は、全般的には「株主資本充実による財務体質の強イヒ」(理論的にいえば財務的破綻にともなうコストの低下)のメリットよりも、負債の節税効果を失うデメリットのほうが大きい可能性がある。
また、前章で述べたような最近の日本企業の投下資本利益率の低下は、エクイテイファイナンスで調達された資金が低収益の事業に投資された可能性があることを示している。 さらに、日本企業が、正味現在価値がほとんどゼロに近い金融投資を増大させたことは、企業が調達資金を価値の創造という企業本来の目的に用いなかったことを意味している。
配当政策は、税引利益を株主への配当支払いと内部留保(事業への再投資)にどう配分するかを決める政策である。 この章では「配当政策は株価や企業価値にどのような影響を与えるか」という観点から、配当政策のあり方について考えることにしよう。
まず、議論の出発点として完全資本市場のもとで配当政策が企業価値や株価にどのような影響を与えるかを考える。 次に、配当とキャピタルゲインに対する税制の違い、個々の株主の特性、配当が株主に与える情報効果など、現実の市場に存在する様々な不完全性を考慮に入れた場合に、配当政策は企業価値にどのような影響を与えるかを考える。
最後に、日米企業が実際にどのような配当政策をとっているかを概観する。 国配当政策の理論1、1完全市場での配当政策と株価配当政策を考える出発点として、まず、完全資本市場のもとで、配当政策が企業価値や株価にどのような影響を与えるかを次の数値例を用いて考えてみよう。
[例1]A社の発行済み株式数は10億株で、毎期100億円(1)株当たり10円)税引利益をあげ、その全額を配当として支払うと予想されている。 同社の株主の必要収益率は10%である。

今、A杜が今期(0期)の1株当たり配当を10円から20円に増加すると、A社の株価はどのように変化するであろうか。 ただし、A社の投資政策や資本構成は増配した場合にも変化しないものとする。
A社が増配をおこなわず、10円の配当を毎期支払い続ける場合、最初の配当が今直ちに支払われるとすると、現在(0期末)の配当落ち前の株価は、次のように計算される。 したがってo期の配当が支払われた直後の株価は100円になる。
また、A杜の株式時価総額は配当支払い前で1、100億円、配当支払い後で1、000億円である。 A社がO期の配当を20円に増加するとo期の配当総額は100~意円から200億円に増大するが、毎期の税引利益は100億円なので、投資政策や資本構成を変えないためには、残りの100億円を増資によってまかなわなければならない。
この場合、A杜の既存株主と増資に応じた新規抹主のキャッシュフローを示したのが図91である。 新規株主はA社の株式に100億円投資するが、必要収益率が10%なので1期以降毎期10億円のキャッシュフローを受け取る。
このため1期以降、既存株主が受け取る配当総額は90億円(1株当たり9円)に低下する。


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